事業報告書
2022年度事業報告  
(2022 年4 月1 日~2023 年3 月31)     公益財団法人伊藤科学振興会

1. 事業概況
 本年度は前年度と同様に銀行金利も相変わらず低水準にあり、コロナ感染症も治まってはきたが、厳格な感染症対策が未だ敷かれていたため、国内外の投資マネーの先行きは不透明であり、財団の運用も難しい状況にあった。2020年7月より財団の運営は会計、経理を中心に国際文献社に業務委託を行うことになったが、本年度は3年目となり、研究助成事業 及び財団の運用運営共に予定通り順調に執り行う事が出来た。本年は、自然科学4分野(物 理、化学、地学、生物)のうち、化学分野を研究助成対象として助成事業が行われた。本年で事業回数も55回となるが、今後も財団実績の向上に更なる努力が望まれる。
 財団の運用面においては、安全性が高く現状では比較的高率な国内債券地方債を保有している。世界情勢が不安定で、先行きの不透明感を考慮した選択であるが、利回りは今後期 待できる状況にはなく、財団としては厳しい状況が続くものと思われる。

2. 研究助成事業
 2022年度の研究助成事業の化学分野を対象に国内主要国公私立大学及び研究機関に研究助成候補者の推薦を依頼したところ、60件の研究助成候補者が推薦された。
第一回定時理事会にて委嘱された外部の学識経験者による選考委員により、直接の利害関係者の排除を確認の上、2回の選考委員会により3名の助成候補者を決定した。

第1次選考委員会
 日時:2022年8月3日
 場所:オンライン会議
 参加者:(選考委員) 岩澤伸治、塩谷光彦、藤井正明
     (理事) 小林昭子、日江井榮二郎
 <議事>
 2022年度研究助成候補者一覧より各選考委員が候補者全員の申請書に目を通し最大5名の研究助成候補者を選定した。その後、選考委員長を互選し、岩澤選考委員が選考委員長 となった。推薦理由の説明やそれらについての意見交換の後12名の候補者を第一次選考通過者とした。12名の候補者全員の応募書類について審査員3名が改めて、第二次審査会までに確認することになった。

第2次選考委員会
 日時:2022年8月18日
 場所:オンライン会議
 参加者:(選考委員会) 岩澤伸治、塩谷光彦、藤井正明
     (理事) 小林昭子、日江井榮二郎
 <議事>
 一次審査会において、最終的に12名の候補者が第二次審査候補者に選ばれていた。二次審査会では各委員が4件づつ分担してきた12名の候補者について、応募書類の内容を基にその研究について報告があった。その後、候補者を絞り込む作業に入った。各委員が押す候補者について、独創的な研究を行っているかどうか、良い研究を行っているにもかかわらず、研究費に恵まれていないかなどが議論された。各選考委員が推薦する第一位、第二位の研究助成候補者について慎重に議論が行われ、最終的に以下の3名が選出された。委員の利害関係者の問題はなかった。いずれもチャレンジングで興味深い研究であった。
 審議の結果、2022年度化学分野研究助成候補者は下記に決定した。

氏名 所属 役職 研究題目 助成金額
秋山みどり
京都大学大学 院
工学研究科

助教

全フッ素化箱型分子の内部空間を利用した電子伝導の実現
100万円
岩野 智
宮崎大学
テニ ュアトラック
推進室
テニュアトラック講師
動物個体深部での特定分子の活性を非侵襲的に可視化する生物発光技術の開発
100万円
奥野将成
東京大学大学院
総合文化研究科
助教
ハイパーラマン分光法による液体中に非局在化した分子振動の探求
100万円

贈呈式
 日時:2022年10月19日
 場所:銀座資生堂9階
 参加者:(贈呈者) 秋山みどり、岩野 智、奥野将成
     (選考委員) 岩澤伸治(委員長)、塩谷光彦、藤井正明
     (来賓)藤原留美子、羽柴秀俊(資生堂)
     (財団役員) 小林昭子、日江井榮二郎、星 元紀、岡村定矩、秋光 純、戸塚浩司、
          釜谷彰一、小谷正博、鈴木啓介、田原太平、浜野洋三、山形俊男
     (事務局) 近松三知代
<議事>
 2022年10月19日(水)午前11時30分より銀座資生堂9階にて、第55回伊藤科学振興会研究助成金贈呈の会を開催した。本年も新型コロナウィルス感染症の影響が心配されたが、幾分蔓延が収まった時期だったため、3年ぶりに対面で開催した。
田原太平評議員の司会のもと、初めに小林昭子理事長より受賞者への祝辞及び研究助成事業の概要についての説明 と挨拶が行われた。次いで受賞者各氏に小林昭子理事長より贈呈状が授与された。
 引き続いて、選考委員長の岩澤伸治教授(東京工業大学)より祝辞及び受賞者の研究内容と選考理由についての説明があった。その後、小谷正博評議員の祝辞があり、続いて受賞者各氏から自己紹介と研究紹介が行われた。記念写真撮影の後、日江井常務理事より閉会の挨拶があり、12時30分に贈呈式を終了した。 贈呈式後に懇談会を催した。サンドイッチとお茶が振舞われた。参加者全員が自己紹介を行 い、和やかな雰囲気の中で受賞者との交流を深めることができた。午後1時30分頃、懇談会を終了した。

3. 理事会
定時理事会(第1回)
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・職務の執行状況の報告
・事業報告、決算報告、監査報告の承認
・規程類変更の承認
・定款変更の確認
・評議員会を決議の省略にて開催することの決議

臨時理事会(第1回)
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・理事長選任
・常務理事選任

臨時理事会(第2回)
 日時:2022年11月30日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・地学名称を宇宙地球科学に変更する件
・新常務理事推薦の件

定時理事会(第2回)
 日時:2023年3月14日
 場所:オンライン会議システム
 <議事>
・職務の執行状況の報告
・助成金事業に関する贈呈及び報告書の確認
・事業計画及び収支予算の決議
・資金調達及び設備投資の見込みの確認
・助成金事業に関する選考委員の選出ならびに決議
・国際文献社2023年度業務委託契約の決議
・常務理事の推薦
・新評議員推薦

4.評議員会
定時評議員会
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・2021年度事業報告が行われた
・決算報告(貸借対照表、正味財産増減計画書、付属明細書、財産目録)の承認
・2022年度事業計画書及び収支予算書の承認
・資金調達及び設備投資の見込みの確認
・理事8名の選任
・定款変更の確認
・規程類変更の確認

臨時評議員会2023年3月30日
 場所:書面会議
 <議事>
・2022年度事業計画書及び収支予算書の承認
・定款変更の確認
・規程類変更の確認

5.評議員選定委員会
 日時:2023年4月26日
 場所:東京都新宿区山吹町358番地 当財団主たる事務所
 参加者:(選定委員・外部委員) 千葉和義、須藤 靖
     (選定委員・財団評議員) 永原裕子、 佐野 理
     (選定委員・財団監事) 釜谷彰一
     (理事/議案説明者) 小林昭子、榎 敏明
<議事>
 ・議長の選出
 ・評議員候補者案の審議ならびに選任

6. 事業報告の附属明細書 
 2022年度事業報告には、事業報告の内容を補足する重要な事項が存在しないため、附属明
細書を作成しない。